神学校ゲームレビュー

言わずと知れた薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲クの草香祭が手がけた問題作。
ピルスラという土壌でどんだけ変態性に特化したゲームが開花するのかと思ってたら、
実際はあのピルスラですら祭てんてーカラーに呑まれていた印象。

舞台はタイトル通り神学校と言うことで、
さぞかしギムナジウム色(どんな色)した青少年たちのキャッキャウフフが展開されるのかと思いきや、
どっこい天使と悪魔、ひいては神様まで巻き込んでの壮大な人間ドラマでした。
メーカーも違うし比べるのもどうかと思ったんですが、
薔薇ノ木プレイ済の人は一つの指標としてテーマがほぼ共通してることが挙げられると思います。
「不幸な境遇に見舞われた主人公が悪魔(のような男)に魅入られる」という点ですね。
攻略手順としても、「周囲の人間の協力や状況証拠を見つけ出し、その回収率によってEDが変化していく」
と言う流れに於いて共通しているかと。
サブカップリングは殆ど無い(ルートによっては皆無ではない)
のでボリューム的にあそこまで極道ではないのですが、
それでも昨今出ているBLゲームの中ではかなりの読み応えのあるテキスト量だと思います。

それから、ゲーム全体に「キリスト教信仰」が深く根付いている為、
いわゆるオカルト的な要素がそのまま存在しているのも特徴。
オカルト現象が実は○○でした、と言う科学的(?)種明しが無いんですな。
ともすれば胡散臭さだけが残りがちな題材を使っていると思うんですが、
現実的なエピソードも織り込んで上手く昇華させることに成功しています。
なので宗教ゲームはちょっと…と言う人でもそれ程拒絶反応無しでプレイ出来るのではないかと。
逆に人を選ぶ要素は発売前から鳴り物入りだった「グロテスクON/OFF」機能ですかね。
でも個人的にはゲーム起動時に散々警告される割には大したこと無かった印象。
画像そのものがグロ、と言うよりは、それなりにグロい画像がとんでもなくえげつない生かされ方をしてる、
といった感じ……視覚よりも精神的にショッキングな描写が多いです。
そもそものBADの数は平均的だと思うのですが、全てがねちこく陰鬱なので、
ともすればHAPPYより記憶に粘着します。
あといわゆる悪魔信仰に通じる画像が多く出て来ます。
個人的にはそれより何より節足動物描写が一番ツラかったですが。
虫はホント、無理って人は無理せず回避した方が無難だと……SEとかもエグイので(笑)

システム周りは快適です。スチルと回想とムービー機能も一通り揃ってます。
攻略はコツをつかめばどのルートでも大体共通なのでそれ程難しくありません。
スチルの取りこぼし等もほぼ無いと思われます。コンプするとコンプスチルが出ます。
カップリングは全キャラリバですが明らかにそれと解る選択肢がルートの途中で1箇所出て来るだけで、
あとはほぼ同じ流れでEDまで向かう為、ちょっと物足りなかったかな…
キャラによっては凡そHAPPYと解釈し難いカップリングも存在します。
あとピルスラのくせに(?)エロに特化してないので、エロスチルも少なめです。
前戯の類はどのカップリングでもほぼ顔グラのみで展開されてしまうので、
何と言うか力の入れ所が歴然としちゃってるなーと思わなくも……ない……
個人的にはジャックを俺の手で幸せにしてやりたかったので、
PS2かPSP化する時はジャックの限定解除をお願いします(笑)

当初の発売日が未曾有の大震災の翌週だったおかげで発売延期等の不測の事態が起ったりもしましたが、
首を長くして待った甲斐のあった久し振りにやり応えのあるゲームでした。
図らずしも「生きていこうと思うこと」「何かを信じ救いを得ること」
について深く考えるには結果的に(皮肉にも)ドンピシャなタイミングだったことそのものが、
このゲームのオカルトたる所以かもしれません。

2011/04/09 記